ほろ苦い、懐かしの味
<創作> <読み切り> <日常> <掌編/文字数:300文字>
公開日:2018/04/07
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:新しい
春先になると父はいつもタラの芽を摘み取っていた。他にもウドやコゴミ、初夏には根曲り竹か。下処理が面倒だと母に言われても、父はよく『道草』をくっていた。
ある日、いつも通り山に入った父が、それきり帰らなくなるまでは。
「今日は旬の物がありますよ」
会食でフキノトウの天麩羅を薦められ、そういえばそんな季節だったなと懐かしさに胸が躍った。
が、皿に盛られたそれらの大きさはどれも同じ。恐らく栽培ものだ。内心がっかりした。一つ口に放り込むとあの独特の苦みが広がるが、昔食べたものの方がより香りがキツかったようにも思える。
あの日ぶりに、採りたての新芽でも供えるか。
区切りをつけるように、私は天麩羅をもう一口頬張った。
<END>