ももんじの鍋

<創作> <読み切り> <ファンタジー> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2019/02/02
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:薬


 飢饉が続いた麓では、とうとう死人の肉さえ口にする者が現れたと鴉どもから聞いた。
 だからだろうか、朽ち果てた俺の祠に痩せ肉の餓鬼が供物とされ放り込まれたのは。

 くたばる事無くしぶとく俺を捉え続けるソイツの視線に耐えかねた俺は、獣肉と野草を鍋に放り込んで汁を作ってやった。
「『薬喰い』だ。人身御供を務める気があるなら、まずはそれなりに相応しい身体となれ」
 餓鬼は目を見開くも、すぐさま差し出した椀に飛びつき一気にそれを飲み干した。
「いいか、お前はこれから俺の眷属となるんだ。こき使ってやるから覚悟しておけ」
 そんな言葉にも満面の笑みでソイツが返してくるもんだから、俺はすっかり毒気を抜かれ共に汁を啜るだけだった。

<END>
 開催時期ちょうどシーズンだったんで「薬食い」ことジビエ料理をメインに据えて。