とある恋人と療養の果実

<創作> <シリーズ:とある恋人~> <恋愛> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2018/10/07
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:食べる


 起きた途端に襲いかかってくる喉の不快感に、篤志は思わず顔を歪めた。
 この1か月は決算などの関係で殆ど会社で根を詰めていたのがたたったのか。溜まっていた振休の消化も、この分だと体調回復に努めるのに消えてしまうだろう。
 ずっと横になっていた所為ですっかり強張った腰と背中を庇いながら、彼は久々に台所へと立った。薬を飲む関係で腹に何かしらは入れておかないといけない。
 冷蔵庫を開けてそれが目に入った時、篤志は思わずその顰め面が綻ぶのを感じた。

『梨は喉を潤すみたいなので、もし無理でなければ食べちゃって下さい。ユキ』

 メモが添えられた皿を取り出すと、彼は両手を合わせて恋人に感謝の意を表し、ありがたく頂くことにした。

<END>