『果て』の畑を歩む彼

<創作> <読み切り> <SF> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2018/03/03
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:人形


 黄金の海とも見紛うような麦畑の真ん中を、今日も彼は一人で歩いていた。
「よう、いい加減その麦分けてくれよ」
 声が響き渡り見回すと、鴉の群れが頭上を旋回していた。
「断る」
 彼が右腕を突き上げたかと思うと、肘から先が割れるように展開し、収納されていた機関銃が露わになる。
「全く、オートマタって奴は融通が利かなくて嫌いだぜ。自分達の主はとうに滅びたっていうのに」
 嘲笑するように喚きたてる群れに対し、威嚇射撃が何発か放たれる。流石に分が悪いと去っていく鴉達を、しかしそれ以上追うことはせず、彼は麦畑を再び歩き始めた。


 この世界には、主の戻ることのない畑を静かに守り続ける案山子達が、今も静かに稼働し続けるという――。

<END>