ひとを(が)くった話
<創作> <シリーズ:とある探偵と花の魔女> <ファンタジー> <掌編/文字数:300文字>
公開日:2017/12/02
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:贈り物
ある言い伝えだ。
その村の裏山には怪物がおり、村は年に一度収穫物を捧げていた。
しかし、その年は飢饉に見舞われ困った村長が山へ赴くと、怪物は人身御供を求めた。村長は嘆き山を下ると、一匹の黒猫を連れた男が道を行くのが目に入った。
こいつを身代りに。
村長は男に嘘八百並べ立て山に行くよう諭すと、自分だけ急いで村へと戻った。
それから数日、村には一向に何も起きず胸を撫で下ろす村長に、家を訪ねる者があった。扉を開けると、そこには件の男と黒猫。
「今『鞄』が使えない状況でね。私としては『贈り物』にされた覚えは無いんだがな」
猫がそう言うと、男は自らの体を手で開いた。
その肚に収まっていたのは、すっかり怯えた怪物だった。
<END>