とある商人と猫の金

<創作> <シリーズ:とある探偵と花の魔女> <ファンタジー> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2017/09/02
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:雲


「本当に良い豆ね!」
 喫茶店の店長が感嘆すると、卸業者が連れている黒猫が自慢げに一声鳴いた。因みに看板娘は外出しており、店内は珍しく店長と卸業者の二人だけだ。
「さて、支払は振込と……」
 そう言うと彼女は、脇に置いていたボストンバッグの中身を探り、薄っぺらい手のひら位の大きさの物体を取り出す。
「『猫の金』、こちらも御所望よね?」
 カウンターにそれを置くと黒猫が飛び乗り、それを凝視したりつついたりした。
「うん、なかなかの代物だな。別世界でも、魔術の薬品だったりガラスの代用品として需要が多いんだ。純度も申し分無いし、これは良い値で買い取らせて貰うよ」
 黒猫『は』、雲母の塊をつついて期限良さそうにそう答えた。

<END>
 『猫の金』とは、雲母の別称のことを言います。黒雲母が風化した時に表に出てくる金雲母がキラキラ光っており、よく金と間違われるものの、金と比較したら大した価値が無いということからこの名前が付いたといいます。
 ですが雲母(特に白雲母の方)は、絶縁体や耐熱ガラスの代用品としても現代でも幅広く使われ、また仙術では金丹(不老長生の薬)の材料としても用いられていたそうです。