とある恋人の出社

<創作> <シリーズ:とある恋人~> <恋愛> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2016/09/03
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:訪ねる


 大荒れの空模様を確認すると、結樹は再びベッドに潜り眠りに就こうとした。
 だが、そのあまりに激しい雨音で意識は逆に覚醒していく。仕方なく彼は台所へ立ち、昼食の素麺を茹で始めた。彼の勤める整骨院は本日定休日なので、無理して外に出る必要もない。

「有休も溜まっているし、今度二人でどっか行くか!」

 今日は本来篤志と二人で過ごす筈だった。
 だが、得意先との商談が急きょ前倒しになったことで、彼は台風直撃のこんな日でも出社して行った。

<どうせこの暴風雨で新幹線が止まって、訪ねてきやしないのは目に見えているのに>

 そんなことをぼうっと考えていたからか、結樹は麺を茹でていた鍋が激しく吹き零れていることに気が付かなかった。

<END>