とある喫茶店の卸業者

<創作> <シリーズ:とある喫茶店~> <日常> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2016/07/02
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:のむ(飲む・呑むなど漢字は自由)⇒「喫む(のむ)」に変換


 茶々良がランチの出前を終え、店のドアを開けた時だった。
 一匹の猫が出てきて彼女の足元に擦り寄ってくる。
「ケディ!? この子がいるってことは……」
 彼女が目線を店内に戻すとカウンターに一人、いかにも人の良さげな中年男性が水煙草を喫(の)んでいた。
「やあ、おかえり。豆はいつもの所に置いておいたよ」
「阿藤さん。いつもお世話になっています。ところで、いつも持ち歩いているソレ……」
「え、この店全席喫煙OKじゃなかった?」
「それは、そうですが……」
 左程気にしていないのか、阿藤という男は悠々と煙を楽しんでいる。
 彼の膝元には先程の猫がいつの間にか座っており、戸惑う看板娘をチラリと見やるとそのまま眠りこんでしまった。

<END>