とある喫茶店がある場所

<創作> <シリーズ:とある喫茶店~> <ギャグ> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2016/06/04
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:地


 茶々良はテラス席で一人珈琲を啜り、休憩を取っていた。
 そこへ突如、間の抜けた鐘の音。思わず音のした方向に彼女が顔を向けると、通りを挟んで斜め右方向に墓場が広がっているのが目に入る。
「……何で店長、ここに店構えたんだろう」

 彼女が勤める店「喫茶去すてばちや」は、良く言うならば隠れ家的なお店だ。
 が、最寄駅からは自転車で大体15分、近所に特に目当てとなる娯楽施設もない住宅街のど真ん中という立地。おまけに2階部分に相当するテラスからは、近くの寺と墓場が見えてしまうという、客寄せには極めて厳しい条件で店を出していた。

「いっそ自家焙煎でも始めて豆の卸でもするか……」
 彼女はどこか虚ろな目をして残りの珈琲を啜った。

<END>
 看板娘が切り盛りする喫茶店「喫茶去 すてばちや」が何故ここまで閑散としているのか、その理由の一端が遂に明らかに。