とある恋人達のお花見

<創作> <とある恋人~> <恋愛> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2016/04/02
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:風


 ベランダの窓を開け、篤志は夜風に当たっていた。出張用に纏めていた資料がようやく出来上がり、ほうと息をつく。
「お疲れ様。アツシさん、明日は休みでしょ。最近ずっと働きづめだったから、今晩一緒にどう?」
 台所から結樹がお盆を持って篤志に近づいてきた。お盆には手作りのつまみ数品と日本酒、趣味の良いグラスが二つ用意されている。
「おう、ありがとう」
 二人が互いの酒を注ぎ乾杯といこうとした時、ふと篤志がこう漏らした。
「明日は雨だし、今年も落ち着いて花見に出かけられそうもないな」
 その時一陣の風が吹き抜ける。止んだ後、二人は思わず頬を緩めた。
 二人が持つグラスには、それぞれ舞い込んできた桜の花びらが静かに揺れていた。

<END>