とある喫茶店の夏季限定メニュー

<創作> <シリーズ:とある喫茶店~> <日常> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2015/09/05
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:音


 サーバーに水出し珈琲が落ちる音を聞きながら、茶々良は看板に書いたメニューを消していた。
【涼しいし、今年のアイスも終わりかな】
「もう開いてる?」
 驚いた彼女はその場を飛びのこうとして、近くにあった椅子に頭を打ち付けてしまった。
「……悪かった、大丈夫か?」
 眼鏡の青年が伸ばした手を取ると、彼女は苦笑いを浮かべた。何とか取り繕うとして注文を取る。
「今朝は皆さんどうされます?」
「そうそう、俺ら全員アイスで。多分、今日が今年の飲み納めになりそうだし」
 茶々良はサーバーの方を見やった。ちょうど5人前といったところだろうか。
 茶々良は笑顔で応え厨房に戻ると、グラスに氷を入れ始めた。

 心地よい音が、夏の終わりを告げた。

<END>