なおせない不良

<創作> <読み切り> <SF> <掌編/文字数:300文字>

公開日:2014/10/04
Twitter300字ss企画(Web企画投稿作品再録)
お題:嘘


「今朝の外の様子はどう?」
 ベッドに伏せる主が尋ねてくるので、『私』はこう答えた。
「青空が広がっていて、辺りには秋の花々が咲き誇っております」
 どす黒い雨が降りしきり草一本生えていない庭を眺め、私はそっとカーテンを閉めた。

 数年前の戦で人間社会は崩壊した。私達は庭に出ていたところを爆撃に遭い、主は二度と動けぬ体になってしまった。従者ロボットの私には、屋敷にスペアの部品があったため何とかお世話を今日まで続けることができたが、その頃から先ほどのように間違った情報を伝えるバグが頻繁に発生するようになってしまった。もう交換用の部品は残っていない。

 深刻な事態の筈なのに、私も主もいつも笑っているのだった。

<END>