テンソウ

<創作> <読み切り> <詩>

公開日:2006/12/31
書き下ろし


僕は屋上に立ち 自らの真下を覗き込んだ
ばかでかい張りぼての様な校舎の天辺に もやしみたくひょろりとした影がのびていた
グラウンドの日向とそれとのコントラストは 異様なまでにくっきりしている
ふとそこに 校門脇のゴミ捨て場にいた鴉が
暑さをしのごうと自分の影にはいってきた

しばらくそれを眺めていた僕は その鴉と僕の影との闇さを見比べていた
ヒトのものをクイモノにする 何とも強いイキモノと
そんな自分を何故比べるのかと 嘲いがこみあげてきた

一歩足を踏み出したときだった

突然鴉が羽ばたいて真上に向ってきた
僕は驚いて後に仰け反り
天色(あまいろ)の世界を目の当たりにした

そこには 今まで僕が見つめていた残像が
淡く強く焼付いていた
その「白い影」を横切るように 鴉は飛び去っていってしまった

ちぃちゃんのかげおくり
小学生のときに読んだ物語の一節と同時に
僕はあることを思い出していた

「天葬」
遥かチベットの山奥では
人々は遺体を鳥に食ませるという
そうして神の使いである鳥に 天高く魂を運んでもらうのだと

しばらく遠くを見つめた僕は
もう一度 テンソウをした

<END>
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